2020年1月5日日曜日

50年前に起きた盗作事件の真相

故谷沢永一氏の著書に『完本紙つぶて』(1978 文藝春秋刊)という「書評コラム」の集大成がある。その中にある「日本の〝盗作史〟を」という文章は1970年4月5日の日付があり、ある大学で起きた、教授の盗作事件を取り上げている。盗作を発見したのは、この私なので、いきさつを記しておきたい。

当時私は大学2年生で、近代文学の学者を目指していた。それは学年末考査の前であった。授業で教授の著書『日本近代文学状況論』が試験の参考文献として指示されたのである。当然のごとく購入し、読み始めたのだが、何かが引っかかる。調べてみると、別人の論文を断りもなしに掲載しているのが分かった。

これは明らかに盗作だ。どうしよう。目をつぶることもできた。しかし、事はあまりに大きすぎた。自分だけしか真相を知らないのはおかしい。友人と相談し、試験が始まる前に受講者全員に真相を明らかにすることにした。試験は中止され、教授会が開かれたのは当然であろう。

その後の私の心境は、別の文章に記したので、ここでは取り上げないことにする。ただ私の一生を左右する出来事だったことだけは確かである。

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